人はなぜ、自分で治すことを手放したのか。
さて、妄想シリーズが止まらない。
ハーネマンにタイムスリップして聞いてみよう。
ハーネマン博士は、およそ200年前にドイツで、ホメオパシーという同種療法という概念の医学を体系化した医師だ。
「ハーネマン博士、聞きたいことがあります。私は、未来からやってきたプライマリ・ケア医の関根沙耶花と言います。初めまして。」
「初めまして。未来からやってきたんだね。」
「いくつか気になる事がありまして。」
「なんだね?」
「まずは、我々未来の社会では、現代医学が進歩し、様々な薬や機械が発明されました。お陰様で感染症で死ぬひとは亡くなり、また救急医学のお陰で、助かる命も増えました。一方で、免疫にまつわる疾患が増えています。アレルギーや悪性腫瘍と我々は呼んでいます。」
「なんとも複雑になっとるね。」
「博士、ところで、博士の住んでいる社会において、自然治癒力というのはどのような位置づけでしょうか。そもそも人は自分の病気をどのように捉えているのでしょうか。」
「う〜む。君は、我々の社会にどうやら期待して来たようだね。200年先の君たちからして、我々は大昔の人間かもしれない。ところが、すでに、自然治癒力という概念自体が覆されつつあるのだ。自然科学で出て来てね、地球上の全ての生物も無機物も全て研究の対象となり、客観的に捉えられるようになって来た。ダーウィンの進化論とあいまって、ますます、人間は動物と同じで、特別な存在ではない。生かされている命のメッセージを聞き取らなくなってしまった。何故ならば、人間そのものが、自然科学で解明すべき対象となってしまったからだ。だから、魂とかなんとかいう部分も含めて、骨抜きにされてしまったのじゃ。」
「そうなんですか。私は、随分と不思議に思っていました。何故、人は、骨抜きになってしまったのか。科学とはそもそも、人を助けるものではないですか?」
「そう思うじゃろ。ところがだ。人間を科学と対象とするということは、あなたの体とわしの体は同じということじゃ。つまり機械やロボットと同じ。すると、人は、自分の体に興味関心を持たなくなってしまう。」
「確かに、私の体が、博士の体と一緒で、ロボットであるならば、自分のものではないみたいですものね。」
「その通り。君は理解が速いね。そうそう。そうすると、人間は精密機械だから、専門家に任せておけということになる。自分たちは分からないからと。」
「では、何故、博士は、そうではなく、人間が自分自身で治る力に気づくことに、とても敏感なんでしょうか。」
「それは、自分自身が経験したからだ。全ての植物を希釈して、試した結果、健康状態で、ある植物をとって、嘔吐下痢症状が出たとする。すると、その植物は嘔吐下痢の時に、取り入れると良くなるという事がわかったのだ。これがホメオパシーだ。」
「ホメオパシーとは、我々のすむ未来では、特に日本では、もう、葬られた医学として、医学としてすら扱っていません。」
「そおかあ。残念じゃの。何も、わしは、まやかしや祈りで何かを治そうとしたのではなく、人には治癒力があり、地球上の全ての生物の力は、私たちの体に力を貸してくれるということを伝えたかったのだ。」
「全ての生き物が、人間に及ぼす影響があるのですね?」
「それはそうだ。生きとし生けるもの、全て、エネルギー体だからね。まあ、ご縁のない植物や動物は関係しない事が多い。概して、自分たちが住んでいる植物、動物が役に立つものだ。」
「そうですか。ところが、博士。私たちのすむ、未来では、世界各国の食べ物を手に入れる事ができるようになりました。このため、冬に南国フルーツを食べることもできます。」
「そうかあ。すごい世の中じゃのお。そうなると、病気はますます複雑になる。そうすると、ますます、世界中の生き物の力をお借りする必要がある。」
「その際に、気をつけることはありますか?」
「もちろんある。感謝することだ。食べ物も薬も感謝して、自分の体に取り入れる事が大切なのだ。」
「では、博士、我々のような社会で、人間自体の治癒力をもう一度見直すにはどうしたらよいでしょうか。」
「そうじゃのう。難しい質問じゃな。ところが、そう難しく考えずとも、とてもシンプルのことだ。君たちの時代にはおそらく、ロボットが進化して、人間の頭脳を超えることもあるかもしれない。そうしたら、うまく機械、ロボットと協力することだ。ただし、感情も思考も働くロボットの開発が望まれる。そのロボットにインタビューしたらよい。その時、人は、人間が言うことよりも、ロボットが言うことを信じるようになるはずだ。何故なら、この1800年においても、もう魔女よりも科学者のことを聞くようになっているから。
そこでだ。ロボットが、伝えるのだ。
君の体は、君自身が治す事ができると。
若者ほどこれは効果的なはずだ。」