幸せより幸せ感
「先生、私は頭が痛いんです。」
「そうですか。それは大変ですね。」
「昨日の夜から痛みが強くて、時々我慢できないほどになるのです。」
「そうですか。ところで、Aさん。喘息発作はどうですか?」
「そう言えば、あれから、全く咳が出ません。」
「良かったですね。では、頭痛の原因について、みてみましょう。」
例えば、こんな会話が診察室でよくあることだ。人は、苦しさは良くなってしまうと忘れてしまう。そして、新たな苦しみが出てくるのだ。
そして、人は概して、良くなったことよりも、新たな苦しみにばかり目が行く。
何故ならば、これは、人間の結果思考による。幸せを求め続けると、もっともっとは止まらない。
「喘息が良くなったら、頭痛も。」
「膝の痛みが良くなったら、腰痛も。」
「洋服を買ったら、靴も。」
「ブランド物を購入したら、他のブランドも。」
「結婚するならかっこいい人と、しかもお金持ちと。」
「結婚するなら美人で、そして料理も上手で。」
そう、もっともっとは、「幸せ」という結果を求めることによって、結局「幸せ」にたどり着かない。
しかし、実は、日々、幸せ感というのは存在する。
「咳が出なくて、今年の冬は過ごしやすい。」
「膝の痛みが良くなって、遠くまで歩けるようになった。」
「新しい洋服を買って、気分良く出かけられる。」
「夫婦で一緒にご飯を食べられるのが幸せ。」
「秋空が綺麗。」
そんな日々、ささやかな幸せ感を感じられたら、毎日が楽しくなる。
結果より過程を大切にしよう。