人が病名にこだわる本当の理由

「先生、私の病気は原因不明だと言われたんです。だから、病名もつかないし、異常はないと言われました。精神科に紹介されましたが、私は、精神病ではないのです。」

と、悲愴感漂って、相談されることもしばしばある。

「先生、私は、○○大学病院で、○○という珍しい病気と診断されました。」

と、嬉しそうに話される方も今までに何人も出会って来た。

○○という病気が、「線維性筋痛症」「重症筋無力症」「機能性ディスペプシア」「咳喘息」「NERD」

などなど。

教科書で調べると、いずれも原因不明と書かれている。医者の中では、このように原因不明の疾患群を診断する時、「ゴミ箱的診断」と言われている。あらゆる検査をして、はっきりと原因が分かっている疾患を除外診断をした後で、最も症状が近い疾患群として病名をつける。

それに対する治療法は、確立されていないことが多い。

にも関わらず、なぜ、病名がつくと人は安心するのだろうか?

そんな疑問を、HHCのメンバーNさんに聞いてみた。

「さやか先生、お料理と一緒ですよ。ご主人が食べたことがないお料理を出すとするでしょ。」

「はい。」

「何て言って出します?」

「初めてのものだけど、と言って、材料を説明するかな?」

「でしょ。私たちは、頂いた食材とか家にある調味料で、創作料理を作って、出すでしょ。」

「喜んでくれることもあれば、その組み合わせは許せないと言って、食べると意外と美味しいのに、食べる前に嫌がられることがあるよ。」

「ですよね。ところが、ご主人が食べたことがない料理であっても、これはエスニック風ラタトゥユですよ とかって、料理名を言って出すとたとて不味くて食べてくれるかも。」

「え?」

「先生のご主人はどちらのタイプかわからないけれど、名前が付いていると安心する人たちってのがいるんですよ。」

「それって、ネーミングってこと?」

そんな会話の後、一人になって考えてみた。

食べたことがない料理で材料が何か分からなくても、料理名が付いていると安心する。

聞いたことがない原因不明の病気でも、病名が付いていると安心する。

どう言う心理だろうか。

そうだ!Commonかそうじゃないか。すなわち、自分だけではない言う安心感だろう。

名前がついていると言うことは、

自分以外にも同じ料理を食べている人がいる。

自分以外にも同じ症状で苦しんでいる人がいる。

多くの人は、病気の原因にはあまり興味がないのかもしれない。診察室で、原因不明の病気で病名もついていないと言う人に対して、バイオレゾナンスで推定した病気の原因を詳細に説明することは多い。伝わる人と伝わらない人がいる。料理の作り方や料理の材料を詳細に説明しても、最後に料理名がついていないと納得しないようである。

最後のNさんの一言は

「先生が勝手に、なんとか病って名前をつけたら良いんですよ。」

「え?」

なんともユニークな発想である。

ネーミングへのこだわりを追求すべきかどうかは、さておき、多くの人に、病気の本当の原因を分かってもらいたいなあと切実に願っている。

 

 

 

 

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