自分の心身の声に耳を傾けよう。

福岡伸一さんの著書を読んでいた。

遺伝子を取り入れた研究によるiPS細胞、クローン技術などが発展しているにも関わらず、それらが臨床的に応用される段階になると予測できない事態が起きて、人間が思い描いたような未来予想図にはたどり着かない。

なぜか。

それは、人間が固定された存在ではなく、動的平衡状態にあるからだというのが福岡氏の著書の内容だった。

これは、つまり、人間はエネルギー体であり、デカルトの時代から説かれた人間機械論の限界を唱えている。東洋医学やバイオレゾナンス医学に親しんでいる私たちからすると、とても当たり前の話だが、実は、これが当たり前でなく、科学者がこの事実に向き合うことにはいくつかの固定観念から解放されていく必要がある。

以前、遺伝子治療について学会発表を聞いたことがある。遺伝子診断、遺伝子治療というと、花形である。特に、現代医学に限界があって、世の中には、次なる先進医療への興味関心が高い。保険適応にはなっていないけれども、がんの次なる治療へと遺伝子診断、遺伝子治療への期待は大きい。

しかし、なぜ、一般化していないのか。考える必要がある。

私たちは、400年前に突如として現れたデカルトの概念、人間機械論にまだ、洗脳されていると言っていいだろう。それまでは、人間はもっと生身の存在で、精神も肉体もバラバラにできないと考えられていた。しかしながら、デカルトの二元論が世に出てから、心臓はポンプであり、血管はチューブである。こんな概念から、医学は発展した。この功績は大きいが、一方で、功罪も大きいのではないだろうか。

そんな人間機械論の究極が、遺伝子でなんでも解明できるという考え方である。ところが、遺伝子を制御しているものが、実に多岐に渡っており、1:1対応で簡単に制御できるものではないということが分かってきたのだ。

当たり前の話である。しかし、人は、単純化したがる。

医者になった頃から、何度となく、患者さんから聞かれた

「私の病気の原因は何でしょうか?」

タバコを吸っていないのに、肺がんになった。甘いものをさほど食べていないのに、糖尿病になり、夫はもっと食べているのにならない。私はがん家系だから、がんになったのでしょうか。

そう簡単な話ではない。そして、遺伝要因よりずっと環境要因の方が大きい。環境要因とは、自分がお母さんのお腹にいる時から始まる。もっと言えば、受精する前の母親、父親の生活習慣までも含む。そして、そのあと、どんな生活をしてきたか。どんな考え方の癖を持ってきたのか。全てを含む。

それを推定して、お話できることはする。

当然のことながら、人間は生命体のため、同じ治療をしても、人によって反応の速度も異なるのだ。

みんな単純化しすぎている。人間は自然の一部であり、神秘的な存在である。だからこそ、美しい。そんな自分の心身と対話していくことこそが、健康づくりの第一歩である。自分の体の声を自分で聞く習慣を持とう。