馬鹿になれ
弘前大学の弓道部で弓を引いていた時、先輩から
「馬鹿になれ。」
と言われたことがある。
馬鹿になれ!?よく分からなかったが、馬鹿みたいに一生懸命、弓を引けってことだと思って、なんだかんだ言いながら、弓を引いた。
どこか、自分の中に満たされない何かがあって、弓道場で、弓を引きながら、友達や先輩、後輩と話をしていると、癒されたんだと思う。親元から離れて、寂しかったのもあって、弓道場は憩いの場だった。
私が思い出す弓道場は、いつも雪の中の弓道場だ。的が見えるように穴を開けたビニールで、覆って、中をストーブを炊いて、寒い寒いと言いながら、弓を引いた。
その弓道場は、まるで、鎌倉のように外から隔離されたぼんやりとした空間を形作っていた。その時の私は、弓を引いている間も、邪念だらけだった。でも、一生懸命、弓をひくことに集中しようとしていたことは確かだ。
今も思う。何かに集中しようとする時、あの弓道場の空気感を思い出す。
そうだ、馬鹿みたいに、集中しよう。