自分の人生を意識的に選択する

診療をしていると、他人の人生に何らかの影響を与えることになる。

以前、検診センターで非常勤医師として勤めていた時の話だ。

「○○さん、食事は、○○気をつけて、禁煙して、お酒はほどほどに。」

「先生、つまらないよ。そんな人生。俺は、酒もタバコも辞めたくないし、好きなもの食いたい。」

「まあ、あなたの人生はあなたのものですから、それは自由ですよ。」

ただ、生活習慣を改めずに、病気になった時に、保険診療で、病院を受診する。その際、その医療費は、健康な人が支払っている保険料や税金で賄われていることを知るべきであろう。

それを聞いた時、私は、本当に、患者さんの選択だと思った。ただ、不思議なのは、生活習慣を改めるつもりがないのであれば、検診を受ける必要がないのではないかと言うことだった。

いずれにせよ、医療はあなたの人生の全てではないし、医師はあなたの伴侶でもない。あなたの人生はあなた自身のものだ。

人生は自分で選択する。

ジェットコースターのように、浮き沈みが激しく、波打ちながら、急成長を遂げる人生を好む人がいる。この場合、病気になったらとことん病気になり、回復も早いかもしれない。この激しい人生を好む人にいくら予防医療を呼びかけても無駄である。本人は、それをスリリングに味わいたいわけだから、予測して準備することは不可能に近い。病気も仕事も人生も全て、スリリングにいく。

では、人生の春夏秋冬を理解し、バイオリズムに乗って、大きな浮き沈みがなく、順風満帆に大きな成果を成し遂げる人がいる。この人の場合、予防医学がとても役立つ。病気になる前に、体のサインを読み取り早めに休むなど心身のケアに気をつける。仕事も準備をして臨む。

一番問題なのは、どのような人生を自分で選択したいかが分かっていない人の場合である。

前者のジェットコースター人生を望んでいる人が、ある時、大病を患って、私のところに来たとしよう。治療をして、病気の再発がないように、生活習慣指導をしたとする。もう、ジェットコースター人生は卒業したいと思えば、実践するだろう。しかし、口では、そう言うものの、潜在意識ではジェットコースター人生を送りたいと思っていれば、実践は伴わない。

あなたは、どちらの人生を選択するだろうか。無論、どちらかだけではなく、他のバージョンもあるだろう。いずれにせよ、その選択による負の部分も踏まえて、覚悟していれば良い。そうでなかったら、きちんと準備し、自分のバイオリズムを読んだ方が良いだろう。

私は、風邪をひいたり、体調を崩した時、ふと思う。まだまだ、ジェットコースターを味わいたいと思っているのかもしれない。でも、より大きなことを成し遂げたいと思ったら、スリリングを味わっている場合ではなく、準備して、望んだ方が良いだろう。そんなジレンマを抱えながら生きている。

あなたは、どんな人生を選択していますか?