正常な判断ができないくらい追い込まれている時
本屋でふと目に留まった本
精神科医が書いた「死ぬくらいなら会社辞めればができない理由」
という本だった。ブラック企業に勤めて、うつになっていく人たちが、辞めることすら判断できずに自殺まで考えてしまうストーリーがリアルに描かれている。
当院にも来院される。
ものすごく一生懸命働いて、「他人のために」「会社のために」「自分なんてまだまだ」というとても真面目な人たちが死ぬことを考えてしまうくらい窮地に追い込まれる。
そっとお伝えする。
「今、大切な判断をするのは先延ばしにしてください。今は正常な判断ができなくなっていますから。」
かつて、自分もそこまでではないけれど、「自分が休んだら、仕事が回らないと自負して、やっていた。」
あるとき、怪我をきっかけに、そんな糸がぷつんと切れてしまった。
怪我しても、医者の代わりはいないから、働けるだけ働いてと言われた。
多分、糸が切れなかったら、怪我しても、車椅子でも、当直していたんだろうなって思う。他の医師に聞いても、そんなの働くの当たり前だろうって言われた。
でも自分にはできなかった。
他の人ができるからと言って、自分が無理がきくかどうかは別の話。
そのときの私は、実家で療養しながら
「何の為に医者になったんだっけ?」と自問自答していた。
妹と甥っ子の何気ない会話に癒されていた。
立つ鳥跡を濁さずって言うけれど、跡を濁したまま病院を去った。
あのときの経験があるから、診察中に言える。
「会社はあなたを守ってくれない。自分の身は自分で守る。」
そんな当たり前のことが描かれているマンガだったが、大反響とのことだ。
このような本が大反響とは、本当に日本の現状は危ういと思う。
経営者として思う。従業員の皆が幸せに働いて初めて、お客様の幸せに貢献できるのだと。