方向性を間違えているvol.6
さて、慢性上咽頭炎という概念を知って以前、記事を書いた。
そして、私なりに、上咽頭のアプローチをしていたら、気づいたことがあった。
咽頭扁桃(アデノイド)は、鼻と咽頭がぶつかる場所にある。
咽頭扁桃(アデノイド)は、気道の玄関になっており、ウイルスや異物の門番となっている。現代社会では、大気汚染も進んでおり、空気中には、排気ガス、香害、化学物質などで溢れている。このため、門番はとても忙しい。あまりに忙しすぎて、リンパ球がパニックを起こして、慢性上咽頭炎という状態になっている。
さらに、免疫組織の中では、この咽頭扁桃というのは、番長の役割をしており、番長の調子が悪いと、以下、子分の働きも悪い。子分が、口蓋扁桃だったり、気管支だったりするわけだ。このため、咽頭扁桃である番長が寝込んでいると、一気に敵陣が体内に入り、風邪をひきやすかったり、喘息症状を引き起こしたりする。
さらに、番長を攻撃するような、敵陣(自己抗体)が現れたりする。敵陣は、番長を攻撃すると、他の場所まで攻撃する。例えば、脳、腎臓、など血流豊富な場所を攻撃するのだ。
それゆえ、自分の番長をケアすることは、体全体をケアするために必須なことだ。
さて、番長のケアはどうしたら良いだろうか。当院で実践する上咽頭炎へのアプローチを紹介しよう。
1、番長の疲労度 つまり上咽頭炎の重症度をバイオレゾナンスで推定する。上咽頭を擦過する事なく、炎症の推定は可能である。
2、上咽頭炎の原因を推定する。化学物質だったり重金属、カンジダやウイルスなどの感染だったりもする。
3、原因は解毒する(前日の記事と同様)。
4、口呼吸から鼻呼吸にする。これは、口から空気が入ると、番長を通り越して、子分が働かなければならないので、寝耳の水で寝ている子分は、おっちょこちょいで、敵陣をやっつけきれないことがある。鼻から空気を通し、まずは番長に挨拶する。すると番長は、子分に声かけし、万全な状態で、敵陣を中に入れないことになる。
5、良く洗う。口のうがいは良くする。これは、子分のケアは良くしているということだ。しかし、番長は、鼻にいる。このため、鼻を洗う必要がある。上咽頭洗浄といって、エキナセアや梅のエキスを鼻から入れて、染み込ませる。生理食塩水で鼻うがいする方法もある。私は、エキナセアハーブ水の上咽頭洗浄を毎日行なっている。とても簡便である。もちろん、口腔ケアとして、歯磨きは基本だ。
6、上咽頭洗浄の副反応を受け入れる。番長のケアを始めると、番長がグチを言い始める。今まで、門番として我慢していた番長。強がりで、優しくされたことがない。急に優しくケアされると、溜まりに溜まっていたグチが止まらないことがある。私の場合には、上咽頭洗浄を始めて3ヶ月目に、咽頭扁桃が痛くなり、鼻水が湯水のように止まらなくなった。7−10日くらいそれが続いたが、めげずに、上咽頭洗浄を続けたら、症状は治り、以前の鼻炎症状が軽くなった。以後、3ヶ月おきにトータル3回同じようなことがあった。その度に、鼻水が出すぎて、鼻が痛くなってしまうことがあった。不思議なことに、上咽頭のケアをしていると、炎症が口蓋扁桃や気管支に降りることがなく、上咽頭だけで止まる。このため、鼻汁が恐ろしいほど出ても、咳が悪化することはなかった。さらに、鼻汁は、リンパ液、脳脊髄液のお掃除になったと推測する。これほど鼻汁ができることは今までなかったが、今ではスッキリしている。番長のグチをきちんと聞いて吐き出してあげれば、子分共々、快く働けるのだ。
7、腸のケア 腸炎があると上咽頭炎は治らない。病巣感染の原理である。このため、食事指導と乳酸菌内服を勧めている。(3と一部重複)
私自身、この治療法を実践したところ、軽度花粉症が改善した。私だけでなく、患者さんやスタッフからも
「ちょっと風邪ひきそうだなと思ったら、上咽頭洗浄すると、スッキリして、治るんです。」
「以前より、鼻の通りが良くなり、頭がスッキリしました。」
そんな声が聞かれた。一方で、上咽頭洗浄を始めてから、耳づまり感や鼻汁がひどくなった。という方もいる。上咽頭への刺激で、分泌物が増した影響と考える。症状が強い方は、中耳炎などになるリスクもあるため、洗浄を一旦やめてもらうこともある。しかし、続けられる方は原則続けてもらっている。どうしても、良くなるためには、番長のグチを吐き出してあげなければいけない。一度、症状が出てくることはやむを得ないのだ。
さて、ここまでは、自然療法を駆使した、慢性上咽頭炎の治し方を話した。では、現代医療では、どんなアプローチをしているだろうか。
多くの耳鼻科医は、慢性上咽頭炎という概念を知らない。今や、患者さんの方が良く勉強しており、知られている概念だ。
では、それを知った耳鼻科医がしている治療法が
1、上咽頭洗浄 これはホームケアとして勧めているところが多い
2、EAT療法 上咽頭擦過療法(以前はBスポット療法と呼ばれていた。B=鼻 という何とも日本人的発想の名前から、Epipharyngeal Abrasive Therapyに変更された)
詳細は→こちら
塩化亜鉛という薬を、上咽頭をこすりながら塗る方法出そうだ。週2−3回治療し、およそ3ヶ月かけて完治する例が多いという。もちろん治療頻度は、重症度によるだろう。
なぜ、効果があるのかというのは、複数本を拝読したら、以下のようだった。
1、瀉血作用 この治療法は、上咽頭を擦って出血させる。この部分は、リンパ液がうっ滞しているため、擦って血を出すことで、リンパ液の排出を促していると言う。
2、塩化亜鉛による収斂作用。もともと炎症を抑える作用があるのだそうだ。なぜ、塩化亜鉛なのかという問いは、誰も答えてくれない。
3、迷走神経刺激。擦ることによって、上咽頭を支配している舌咽神経、迷走神経を刺激する。このことによって全身の炎症症状を抑えているそうだ。
病巣感染という考え方によって、頭痛、全身倦怠感、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、掌蹠膿疱症などの原因の一つが上咽頭の炎症があるというのは最もなことだ。このことに今までの現代医療が気づいていないか、無視してきたものを、もう一度再考するという視点は素晴らしい。
しかし、私にとってEAT療法は、IgA腎症の扁摘パルス療法と同様、対症療法の域を出ないのではないだろうかと推測する。咽頭扁桃(アデノイド)は口蓋扁桃腺のように切って取れないから、薬を塗って、擦って炎症を抑えれば良いという発想なのではないだろうか。この治療法を行なって、一時的に症状が良くなっても、病気の根本をアプローチしないと再発や二次障害を起こしかねないのではないだろうか。
EAT療法の効果については、私は受けたことがないし、実際に治療を一定期間受けた人の経過を診たことがないので、何とも言えない。
ぜひ、耳鼻科の先生方からは、長期予後を教えていただきたいと思う。一定の臨床研究の結果を待ち、検証したいと思う。
ただ、もし、この治療法が短期的にでも、効果があるとすれば、再発予防のための生活習慣指導をすべきだし、EAT療法を受けるまで重症化しないような上咽頭のケアが必要だろう。
現代医療を実践する医師は、どこまでいっても、病気を発症してから治療をする。上咽頭を擦過して血液が出なければ、慢性上咽頭炎としてのEAT療法の適応はないそうだ。しかし、擦過して血液が出なくても、軽度の上咽頭炎は存在する。
この軽い段階で、耳鼻科を受診する人は皆無だ。内科医こそ、慢性上咽頭炎を理解し、日々の鼻のケア、腸のケアを指導し、上咽頭炎が悪化しないようにケアすべきだろう。
治すから予防へ
まだまだ、啓蒙活動は続く。