心の問題は誰のものか?

いつから、心の問題は、精神科に任せると言う発想になったのだろうか。

心の問題は、全ての医師が取り組むべき課題である。この問題は、循環器内科医でも消化器内科医でも皮膚科医でもはたまた眼科医でも、どんな専門医にとっても、重要な課題なのだ。

その理由は2つある。

1、心の問題が関与していない病気はない。

精神神経免疫学という学問が欧米で発展しているそうだ。この学問によると全ての病気に人間の心理面が関与しているというのだ。動悸も腹痛も皮膚のかゆみも目の痛みも、いずれも心が関与していない病気はない。

2、心理的アプローチが身体的アプローチの効果を増す。

「好きな医者にかかれば治り、嫌いない医者にかかれば治らない。」

と言う言葉を残した文人がいるそうである。これは、同じ特効薬を処方しても、同じ手術を施しても、嫌いな医者であれば治らない。なぜならば、患者の心が医者の心と同じ方向を向くことによって初めて患者の治癒力は無限大に引き出されるからだ。

この心による効果は、現代医学では、プラセボ効果(偽薬であっても効果があること)と言って馬鹿にされる。ところが、プラセボ効果とは裏を返せば、治療そのものの効果は患者の心の状態によって左右されると言うことだ。心が楽になり、思考が積極的になると、人間の治癒力は増すのだ。

それゆえ私は、総合医やプライマリ・ケア医に限らず、医者は全て、人間を扱うわけだから心療内科の基本を学ぶべきだと思う。

少なくとも、パソコン画面だけをみて、3分診療で終わる診療をエンドレスにしているのであれば、それはAIドクターにお願いすれば良い。

我々は人間にしかできないことに特化すべきだ。あとはロボットに任せれば良い。

何れにしても、これからの医療界では、心の問題の重要性は増していくだろう。今後、医療者向けに心の問題の扱い方セミナーを展開できたらと考えている。

だからと言って、医者任せでは何も変わらない。

心の問題はあなた自身のものである。医者に治してもらうと言うのではなく、自分で治したいと言う意識をしっかり持った上で、医者と恐れずコミュニケーションをとろう。心の問題を共有できるかどうかは、お互いのコミュニケーションによるのだ。