サルトル先生との会話 Vol.3
昨日の会話の続きである。
「サルトル先生、会社の理念を共有して、皆がそれに賛同して、ワクワクすれば、それは、押し付けでも支配でもなくて、チクセントミハイの言うフロー状態に入るのではないでしょうか。」
「本当にワクワクすればな。ところが、組織の中に、ものすごく心の底から賛同して、生きる歓びをこの会社で働くことで見出すことができている人がいるとする。すると、必ず邪魔する者が出てくるのだ。」
「なぜですか?一緒にワクワクして働けば良いじゃないですか?」
「これは、恐れの構造に深く関わるのじゃが、このワクワクしている社員は、恐れを手放しているので、何をやってもうまくいく。仕事もプライベートも順調だ。ところが、会社の理念に共感できない者は、もちろんプライベートでもうまくいかないとする。すると、この社員は、うまくいっている社員を嫉ましく思う。しかし、人は、他者のことを嫉妬すると、嫉妬していることは認めずに、その人を攻撃するのじゃ。だから、怒りが爆発する。喧嘩やいじめが起こることになる。」
「複雑ですね。」
「私は社長として、どうすれば良いのでしょうか。」
「そうですね。君は、人を頼ることだ。自分でなんでも解決しようとしない。もし、社員の中に、君の会社の理念に共感している人がいれば、よく話を聞いてみると良い。チームで解決する。その基本は対話なのだ。」
「喧嘩やいじめは嫌ですけどね。」
「まあ、子供みたいな喧嘩やいじめというのは、なかなか起こらないが、もう少し陰湿なものはもちろんどこでもあることだ。それを、君がコントロールしようとしてはいけない。」
「え?じゃ、指をくわえて見ていろということですか?」
「君、放置することと見守ることは異なるのだ。」
「え?僕のは、放置ということでしょうか。」
「さよう。子育ても同様だ。うちは、みんな子供に任せています。自立していますから。という母親に限って、子供をよくみていない。よくみるとは、手を出すことだけではない。見守るということ。ただ、放っておくのではなく、見守る。」
「まあ、難しいですが、コントロールしようとせず、かと言って放置するのではなく、見守る。そして、一人で解決しようとせず、より対話して、チーム全体で解決しようということですね。」
「そうだ。北風と太陽の話を知っているかね?北風で服を脱がそうとしてはいけない。太陽になれば良い。」
「最初に全てが自分に起因すると言われて、混乱しましたが、なんとなく分かりました。太陽になれば良いんですね。僕は、北風だったと。」
「その通り。君も分かってきたね。そして、北風から太陽になるためには、君自身の恐れを手放さなければならない。」
「サルトル先生、やっと分かりました。僕の中には、恐れが大きくありました。社員に嫌われたくない、嫌われたらどうしようと思う余り、問題を見ようとしていなかったかもしれません。人はみんな僕の方向を向いていると思い込もうとして本質が見えなくなっていました。事実から目をそらさず、かと言って、コントロールしようとせず、しっかり太陽として自分の使命を全うしたいと思います。」
「おお、O君も成長したね。これで安心だ。まあ、そう言っても簡単なものではない。また新たな課題も出てくると思う。また、経過を教えてくれたまえ。次の会う時までの課題を渡そう。これは、瞑想とは近いが、自分を客観的に見つめる時間を作りたまえ。前回の瞑想は相手との対話だったが、今回は、自分を自分で見つめる。鳥になった自分が2メートル先から自分を観察する。これを毎日30分、座位で続けることだな。」
「分かりました。やってみます。また、次回、お願いします。」
つづく。