サルトル先生との会話 Vol.2

先日の妄想の続きである

「サルトル先生、私は、社員の一人と、瞑想の中で対話しました。なぜ、そのように、会社にとってマイナスのことをするのかと。」

「結果は、どうだったかね?」

「堂々巡りに終わりました。私が期待し過ぎていたということです。私は、会社を経営していますから、全体のことを考えて、顧客第一にサービスを提供するということは当たり前と考えていましたが、社員には伝わっていませんでした。」

「では、その社員は何を考えていたかね?」

「先日、出したボーナスで家族とどこに行って、何を買って、何を食べるかということで頭がいっぱいでした。私は、ボーナスを出せば、もっと会社のために働いてくれると思っていましたが、そうではありませんでした。」

「そりゃそうだよ。家族と一緒に旅行したり、プライベートが充実するのは結構なことだ。しかし、お金で人をコントロールしようというのが誤りだね。」

「そうなんですね。瞑想の中で、どうして、そのような背反行為をするのか聞いてみたのですが、納得のいく答えは得られませんでした。つまりは、意識の差だけが分かったまでです。」

「O君、君はまだ、この問題をその社員の問題だけに終始しようとしているね。そうではない。君の意識の問題が、会社の問題に反映されているということだ。」

「つまりは、僕のせいということですか?」

「誰のせいということではないが、組織全体の問題を孕んでいる。このような問題の場合、例えば、問題を起こした社員がやめても、また同じような問題が出てくる。」

「はい、過去にも同じようなことがあったから、悩んでいるわけです。」

「なぜ、そんなに、会社の売り上げを上げたいのだね?効率化を推し進めようとすれば、必ず非効率的なことが現れるのだ。商品が売れて、お客さんの喜ぶ顔を見ることができて、ハッピーを感じられれば良い。でも、商品がどんどん売れた時、もし、その社員が、その商品の良さと会社の理念を共有していなければ、ただ仕事が増えるだけさ。もちろん給与が上がっても、それは、お金のインセンティブしか生まれない。」

「なるほど。つまり、会社の理念の共有が十分なされていないということですね?」

「そうさ。例えば、アメリカでこんな実験があった。ある弁護士会に、低所得者向けのカードローン返済のトラブルに対して相談に乗って欲しいと、ある州からお願いした。相場の10分の1の報酬をその州から支払うという提案だった。その弁護士会はそれを断った。そこで、その州は、今度は、社会貢献のために、ぜひ、ボランティアでして欲しいとお願いしたら、弁護士会は喜んで引き受けたそうだ。」

「?」

「つまりだ。お金だけがインセンティブになってしまうと、人間はエゴに走ってしまうが、社会貢献という大義を共有できると、皆が進んで取り組むことができる。」

「つまり、この商品が売れて、人がどのように幸せになって、社会をこんな風に変えていきたいという会社の理念を心から共有することができれば、皆のやる気が出るということでしょうか。」

「まあ、そういうことだが、そう簡単なことではない。まだ、Oくんの中には、自分の思い通りにしたいというエゴがあるから、その社員は動くことはない。人は、誰かにコントロールされるというのが嫌なのだ。」

「え?どういうことですか?」

 

サルトル先生との会話は明日に続きます。