インフルエンザ検査について
「先生、インフルエンザの検査をしてください。」
馬鹿らしい。
心の中で呟きながら、休日当番では、何十人もの患者の鼻に綿棒を入れて
検査をした。
バイオレゾナンス診断が使えない場合の私のインフルエンザ診療について
説明しよう。
私の頭の中はこうなっている。
インフルエンザ検査をして、陽性の場合は、話が早い。
インフルエンザですから、治療しましょうと。
では、陰性の場合、私の説明はこうだ。
「検査は陰性です。この場合、あなたはインフルエンザに感染していないか、感染していても検査で出なかっただけの可能性があります。検査は完璧ではありません。偽陰性、すなわち、実際は感染しているのに検査に反映されないことがあるのです。」
「???」
患者さんの反応は、皆、はてな?である。
どうやら、検査は完璧だと思っているらしい。
そこで、こんな表を描いて説明する。
「発症後12−36時間以内がウイルス量が増えるので、この間の検査の感度は高いです。
どうしても、検査結果にこだわるのであれば、明日もう一度検査をする必要があります。
でも、それは、ナンセンスです。
あなたの症状、すなわち39度の発熱、咽頭後壁に敷石状の発赤があること、家族がインフルエンザに感染していることを
考慮すると、あなたは臨床的に、インフルエンザに感染している可能性が高いです。」
「では、どうしたら良いですか?」
「インフルエンザは、風邪の一種です。特に、薬を飲まなくても治ります。
喉の痛み、風邪の初期症状に効く漢方薬と、痰切り剤を飲めば十分でしょう。
解熱鎮痛剤は、熱を下げることで、免疫力を下げますから
どうしても辛い場合を除いて、あまり飲まない方が良いでしょう。」
「夫が、インフルエンザに効く吸入薬を使って治療していたのですが。」
「はい、抗インフルエンザ薬はあります。インフルエンザの増殖を抑える薬ですから、発症後48時間以内に
吸入すれば、効果はあります。この効果は、発熱期間を1日程度短縮する程度です。
検査結果は陰性でしたが、臨床的には、インフルエンザですから、処方することはできます。」
「では、お願いします。」
まあ、丁寧に話すと上記のようになる。
休日当番では、患者さんが多く随分待っていたため、
検査の説明、抗インフルエンザ薬の説明は随分と省いて簡単な説明となった。
実は、私の頭の中は、上記でも説明しきれていないことがたくさんあるので、
以下に説明しよう。
1、インフルエンザ検査について
まず、バイオレゾナンスを用いれば、鼻に綿棒を突っ込まなくても
リアルタイムにウイルス量も含めて推定できる。
当院では、子供の診療でも、ほぼ、子供の体に触らないので
当院しか受診したことがない子供は、いつも笑って診療している。
このため、検査絶対主義の人たちに会うと馬鹿らしくて仕方がない。
そもそも検査の感度はさほど高くない。
どうしても、インフルエンザキット検査で確実に診断して欲しかったら、以下の二つを心がけて欲しい。
1、発熱後24時間経過してから病院に行くこと。
2、鼻の奥の上咽頭の粘膜を十分にとる必要があるため
検査中に頭を動かしたり、逃げないこと。
そもそも、その陰性とか陽性とかに振り回されるのがナンセンスなのだ。
さらに、こんな検査キットが出る前は、医者は、患者さんの様子で臨床的に
インフルエンザを診断し、治療もしていた。
検査キットが出たばっかりに、検査陰性に、翌日も病院受診を勧めるという
なんとも不可思議な診療体制になっている場合がある。
検査を過信しないで欲しい。
2、抗インフルエンザ薬について
タミフルの異常行動で騒がれたのをご存知だろうか。
10代の子供にタミフル服用後の異常行動が出た。それから、タミフルは10代には処方しないよう勧告された。
10代には処方しない。すなわち0−9歳と20歳以上には処方可という時代があった。
ナンセンスだ。
10代の子供に危険で、0−9歳の子供に安全とどうして言えるだろう。
ウイルスの増殖を抑えるということは、白血球の働きも抑える。
だから、免疫力を下げるゆえに、発熱しないのだ。
ゆえに、タミフルを飲んだ人ほど、熱は早く下がるが
ウイルスが体の中に残存して、風邪症状が長引く結果になる。
では、他のリレンザやイナビルなどの吸入薬はどうだろうか。
作用機序は定かではない。
もし、効果があるとしても、発熱期間が1日短くなるだけである。
飲んだら、即効で良くなる訳ではない。
3、漢方薬について
漢方の誤解がとても多い。漢方薬は長く飲まないと効かないと思っている人が多い。
急性期と慢性期に使う漢方薬は異なる。
もちろん、体質改善のための慢性期に使う漢方薬は、飲んですぐに効くことはなく
効果が感じられるのに数日はかかることがある。
しかし、急性期に使う漢方は即効性があるのだ。
喉が痛い、頭が痛い、熱がある これらの症状を和らげるのに
とても役立つ。ただ西洋薬と違うのは
症状を一旦外へ出してから良くするということだ。
熱を上げて、汗をかかせて、そして、免疫力を後押しして
効果を発揮する。
どうか、普段漢方薬を飲まない方でも、風邪の時に私が漢方薬を勧めたからと言って
毛嫌いしないで欲しい。
解熱鎮痛剤や痰切り剤、咳止めなどの西洋薬よりずっと役に立つのだ。
あなたが、風邪を引いて、高熱でどうやらインフルエンザにかかった。
さやかクリニックを受診したいという場合は、この記事を読んでから
受診するかどうか決めてほしい。
インフルエンザはただの風邪。
これで死ぬことはない。
なるべくなら、病院を受診せず、先日のブログに書いたように
ホームケアで寝ていて欲しいというのが私の願いだ。
できれば、インフルエンザにかからないように予防的に
メンテナンスでかかって欲しい。