愛こそ全て vol.4
僕は、ココちゃんのアドバイス通り、翌日、群馬の実家に帰省し、両親に話を聞いてもらった。
「僕、仕事をやめようと思う。」
「お前、もう、そんなこと言っているのか。石の上にも3年って言うだろ。まだ半年だぞ。高校にもろくに行けなかったからな。大学はかろうじて卒業したのに。何やってるんだ。」
父さんはいつだって厳しい。でも、母さんは違う。
「あなた、そんなに厳しく言ったらかわいそうよ。せっかく、久しぶりに帰ってきたんだから、美味しいものでも食べましょう。」
そう言って、僕の大好物の母さんの手作りハンバーグを食べた。やっぱり、実家に帰ってくると、気が緩む。
ご飯を食べた後、台所で洗い物をしている母さんに話しかけた。
「本当に辛いんだ。」
「あなたの好きなようにすると良いわよ。母さんはいつだってあなたのこと、応援してるわ。ただ、何で、やめようと思うの?」
「上司のスピードに付いて行けない。」
「え〜っと、前山さんでしたっけ?一度、太田出張の際に、家に寄ってくれたわよね。とても良い人じゃないの。」
「う〜ん。そうなんだけど。」
「光一、あのね。あなたは、のんびり家なの。マイペースで良いのよ。でもね。仕事っていうのは、自分を成長させていく場所だから。嫌だからって辞めてたら、どこに行っても勤まらないわ。前山さんは、あなたのこと思って色々とアドバイスしてくれてるんじゃないの?」
「そうなんだけど。言っている事についていけないんだ。」
「そう前山さんに伝えたの?」
「え?付いて行けないなんて言えないよ。馬鹿だと思われる。」
「あなたは、昔から、自意識過剰。劣等感が強い上に、プライドが高いのよ。誰も、馬鹿だなんて思わないわ。そもそも新人なんだから、できなくて当たり前。きちんと何が分からないかを伝えないと、いつまでたっても堂々巡りよ。」
「北山部長は、前山さんを指導担当から外すって言ってくれたんだ。」
「そんなに考えてくれる会社はないわよ。でも、前山さんじゃない方が担当になっても同じ。あなたの中のその頑固さを改善しないと。」
「もう。母さんは僕のことを分かってくれない。もう、寝る。」