心のケアも「コト体験」
人が本当に変わるのは、見聞きしたのではなく、その事に感動して、自分で行動に移した時、つまり体験した時だと昨日のブログに書いた。
実は、心のケアでも同じことが言えるのだ。
講演会で感動して、当院に診療に来てくださる方がいる。
広報や新聞の記事を見て、当院に診療に来てくださる方がいる。
見て、聞いて、感動して来てくださる。
しかし、行動変容を促すのに、あと一歩が必要である。
これは、診療では、足りない。
感動して、クリニックに来るというのがすでに行動に一歩踏み出しているのだが、さらに一歩自分の課題について行動することへのハードルが高い。これは、診察室で、私がカウンセリングするのでは、限界を感じている。
そこで、ぐんまHHCとして、セミナー活動をしてきた。セミナーはお互いにコミュニケーションを取りながら、笑ったり泣いたりしながら、心のケアを学んで行く。
それでも、体験する感動には一歩足りないことに我々は気づいたのだ。
そこで我々は、「コト体験」を精神科ショートケアとして展開する。
ソーシャルスキルトレーニングという方法がある。
会社で上司に怒られる経験をする。もう上司と話したくないと思う。
このことを、みんなの前で話す。
グループのメンバーに上司役になってもらい、会話を再現する。
どうしたら良かったか皆に意見をもらう。
改善して例で、もう一度、会話を再現する。
体験することで、コミュニケーションスキルを身につける方法だ。
つまり、診療で、いくら、私が、注意を促して、アドバイスしても、それを実行に移せなかったら、患者さんにとって何の意味もない。
しかし、グループワークで体験によって得られた感覚は、腑に落ちるため、次の経験に生きるのだ。
実社会で、ぶっつけ本番で体験するのは、辛い場合もある。
そこで、私たちが、「コト体験」として、気軽に体験できる場を提供するのだ。
これは、実は、就労支援にもつながると考えている。