肝臓と腸の密接な関係

学会の報告の続きである。

慶應大学SFCで研究されている渡辺光博先生のお話を聞いた。

腸肝循環という言葉をご存知だろうか。医学用語であって、一般的には馴染みがないかもしれない。

肝臓で作られた胆汁酸は小腸に分泌されて、消化酵素として働く。使い終わった胆汁酸が再吸収されて肝臓に戻って再利用される。これを腸肝循環という。

胆汁酸の再利用だけなら、そう多くを語る必要はない。実は、小腸と肝臓の深い関係がある。

実は、小腸内の腸内細菌の質によって、胆汁酸の質が変わるそうだ。腸内細菌に悪玉菌が多いと、胆汁酸が再吸収されて肝臓に戻った後、毒性のある胆汁酸が分泌される。この毒性のある胆汁酸が、全身を巡り、糖尿病や高脂血症の発症に関与しているという。一方で、腸内細菌に善玉菌が多い場合と、糖尿病などが予防されるという。

何とも不思議な、小腸と肝臓の密接な関係である。

腸内細菌というと、腸内に限ったことだけと考えがちだが、実は、肝臓を介して、生活習慣病に関与しているのだ。

当院のデトックス治療の順番は、

1、腸内環境を整える

2、肝臓の解毒能力を高める

万が一、2から始めたらどうなるだろうか。腸内環境が悪いまま、肝臓から解毒治療を始めたとしよう。腸から十分解毒していない状況のため、全身に多くの毒素が循環する。この状況で、肝臓にエンジンをかけてしまうと、腸肝循環が活発になり、毒性のある胆汁酸が全身の循環する。次から次へと肝臓へ毒素が運ばれて、肝臓はテンテコ舞いとなる。つまり肝臓は必要以上に疲弊する。これでは、負の連鎖となってしまう。

このため、解毒は、必ず1→2の順番で行う必要があるのだ。

デトックスをしたかったら、あなたの便を観察しよう。毎日排便していない、または、バナナ状の茶色い便が出ていなかったら、食べ物を見直してみよう。