総合医の強み
「先生の専門は何ですか? 」と聞かれることが多い。
「総合診療です。」と答えると、医師である同僚にさえ、
聞き返されることがある。
一般市民となれば、頭の中に「???」が浮かんでいるようだ。
「総合医」「プライマリ・ケア医」「総合診療医」
いろんな言われ方がするが、
2018年度から「総合診療専門医」なるものが、制度化されるようだ。
実は、高度に専門分化されてからの文化の方が短いのではないかと思う。
古くから、医師は、体全体を診て病気を診断し治療する存在であったのであろう。
たとえば、
「お腹が痛い。」
と言って、あなたは何科を受診するのだろうか。
私は消化器の病気だから「消化器科」を受診するか。
消化器科で胃カメラや腹部エコーをしたが、異常はなかったとする。
それでも痛みが良くならない。
実は「心筋梗塞」だったという話もあり得る。
そのための見立てをするのが医師の役目である。
これを生業にしたのが、総合医なのだ。
沖縄でお世話になった先生も、
自治医大卒業生の先生も、専門分野も持ちながら皆、
総合的に診る力が素晴らしかった。
近年、専門医となるとその分野しか分からないという医師が増えたために、
総合医という専門分野がでてきた。身体全体を診る診療科である。
私は、
本来身近に必要とする医師は、専門医ではなく、総合医なのだと思う。
そして、診断をつけて、では、「心筋梗塞」だから、
早く心臓カテーテル検査をしましょうと循環器内科医へ紹介すれば良いのである。
買い物だって、いつも行くスーパーマーケットやコンビニは何でも揃っている。
どうしても特別な物が欲しいときにデパートに買い物に行けば良いのだ。
しかし、周りに、スーパーマーケットもコンビニもなく、
デパートだけが並んでいたらどうだろうか。
とても暮らしにくいと思う。
普段使いは、近くのスーパーで十分なのだ。
医療もそうだ。普段使いのクリニックで頼りにする先生は、
専門医ではなく総合医が必要だ。
多くの開業している先生は、専門性を持っていても総合的にみていると思う。
その上で、必要とあらば、専門医に紹介する。
これを制度化しているのがイギリスである。
イギリスはジェネラリスト(総合医)としてのかかりつけ医を受診しなければ、
いきなりスペシャリスト(専門医)を受診することはできない。
これは医療費の削減に大きく貢献している。
今の時代は、ブランド志向なのか分からないが、
高級デパートに並ぶ超専門医志向が著しいように思う。
専門医の先生方なくして、今の医療はないのは十分に理解しているし、
感謝している。
我々開業医の診療は、病院の専門医の先生方との連携なくして成り立たない。
しかしながら、医療費が40兆を超えている今、
まさに「総合医」の必要性をもっと議論するべきだと思う。