私の強み
今まで統合医療の大家と呼ばれる先生方にお会いしてきた。
多くはなぜか、外科の先生だった。そして、非常に研究熱心で、天才としか思えない洗練された技術の持ち主ばかりだった。
それは、外科の手術の技術に通じるのかもしれない。内科の先生もいらしたが、まるで魔法使いとしか言いようのない診療だった。元来、私にとっては、一つの技術をここまで極めるというのは、とても自分にはできることではないと感じていた。本当に素晴らしいと思う。そして、このような先生方なくして、医学の進歩はないのだと思う。
私には、先人の先生方のような洗練した技術はない。では、そんな天才ではない私がどうやって統合医療を実践し開業したのか。
その私の強みは何か。
私の強みは3つ。
バランス感覚と柔軟性、そして、チャレンジ精神である。
女性であり、総合医であることの所以は、まさにバランス感覚にある。相手のニーズを聞き出して、そのニーズに合った治療法を選択し、相手に合ったスタッフを選択し、チーム医療を提供する。これはバランス感覚と柔軟性なしにはできない。そして、分からないことは何でも調べて、調べて分からなければ聞いてみる。そして、実践してみる。この実戦へのハードルを低くすることで、あらゆる失敗を成功につなげてきた。と言うか、何が失敗で何が成功かはよく分からない。チャレンジしないことには前に進めないのだ。失敗しないように万全の準備をすることも大切かもしれないが、どっちに転がるか分からない。まずやってみるのも大切なのだ。そんなふんわりしているようで中身は頑固な私だからこそやれることがある。
世の中には、人それぞれ役割がある。ある知人から聞いたことがある。人の中には、0から1を生み出す人、1から10へ伝える人、10から他へ伝える人がいる。それぞれの役割がある。おそらく、0から1を生み出す人と言うのは、世に言う天才だと思う。技術者であったり、先進的な技術を生み出す人たちなのだ。そして、天才は天才に伝えることはできるが、我々凡人に伝えることは苦手なのだ。なぜならば、生み出された1は希少すぎて、多くの人には理解できないのだ。そこで、天才の通訳をする秀才が必要なのだ。人に分かりやすく噛み砕いて伝えると言うのは、天才の頭の中も凡人の頭の中も両方理解する必要があるのだ。それは私の得意とするところである。天才が希少すぎる故に人に理解されない苦しみもわかる。そして多くの人がそれをなぜ理解できないのかもわかる。その両者の通訳は、秀才だから成せる技なのだ。秀才には秀才の役割があるのだ。
最近、やっと腑に落ちたことがある。「さやかさん、素晴らしいことやってるんだから、自信持ってくださいね。」と何度か複数人の女性から言われたことがある。私が男性なら、喜ぶところかもしれないが、女性が女性から言われてもあまりピンと来なかった。それが、ここにきてやっと腑に落ちたのだ。自信を持つとは自慢することでもなく、そして謙遜することでもない。ただ自分の役割を果たすだけである。医師であり、女性であり、そして、弱さを知っている人間だからこそ果たせる役割がある。
今年のテーマは「躊躇なく目立つ」と伝えたが、個々人に遠慮しないで、自分が果たせる役割を公のためにきちんと果たしたいと思う。