愛こそ全て vol.3
結局、僕は、心療内科に行くことを約束し、会社を休むことになった。
やめようと思ったのに、精神病扱いだ。やっぱりやめてやる。僕は、そもそも多人数で仕事をすることが苦手なんだ。そもそも、前山さんのように仕事をバリバリする人に付いていけるはずがない。そもそも、この仕事をそこまでしたいかっていうとそうでもないしな〜。
もう、前山さんの目を見るだけで、吐き気がしてくる。もう無理だ。
やっぱり辞めよう。
ここで頑張ったって、自分にはできるはずがない。
自分には合っていない。
一人で何かをする仕事だって世の中にはあるはずだ。そうだ。もう一度、グラフィックデザイナーの勉強をして、HPとかかっこいいのを作れるようになろうかな。
そうは言っても、上司に言われたので、心療内科には一応行かなくちゃな〜。
あ、そうだ。当社が開発中のうつ予防アプリがあった。社員向けに公開されていた。アプリが自分のドクターだって言ってたな。僕はうつかもしれない。アプリをダウンロードして使ってみよう。
なになに。
生年月日 性別 出身地 好きな食べ物 嫌いな食べ物 得意なこと 苦手なこと
「私は、あなたの心の相談役、ココちゃんです。相談したいことは何ですか?」
「はい、仕事が合わなくて、辞めようと思っています。」
「どうして、仕事が合わないと思うのですか?」
「上司のスピードに付いていけません。」
「仕事自体は楽しいのですか?」
「一人でやる書類整理とか、在庫管理とかは、比較的楽しいです。」
「仕事上、苦手なことはありますか?」
「人とのコミュニケーションが苦手です。分からないことを聞いてって言われますが、聞くより調べる方が良いって思います。」
「なぜですか?」
「聞くのって恥ずかしいです。こんなことを聞いて馬鹿だと思われるのが嫌だからです。」
「人に聞かないで、調べて解決しない場合、どうしますか?」
「どうにもできずに、そのままになってしまうことがあります。」
「それは、あなたにとっても、会社にとっても良いことではないですね。」
「だから、僕は、この会社には向いていないと思うんです。もう、誰かにプレッシャーをかけられて、仕事するのはできません。」
「人に聞いたらどうですか?分からないことを。」
「だから、聞くのが恥ずかしいのです。馬鹿だと思われたくないし。何て聞いたら良いか分からないし。そもそも、ルーチンの決まった仕事はできますが、そう、柔軟性を問われるときついんですよ。僕はHSPだし。」
「では、いくつか、質問に答えてください。」
「はい。」
「あなたは、今、漠然とした不安を抱えていますか?」
「はい。」
「頭が真っ白になり、思考がフリーズしてしまうことはありますか?」
「はい」
「ものを壊したり、暴言、暴力をふるってしまうことがありますか?」
「いいえ」
「涙が止まらないことがありますか?」
「はい」
「あなたは、今、やらなければならないことを後回しにしていますか?」
「はい」
「あなたは、今、仕事に付いてプレッシャーを感じていますか?」
「はい。」
「あなたは、今までできたことでも、今はできないように感じますか?」
「はい。」
「あなたは、今、全ての事柄に恐れを感じ、自分の心の扉を閉じています。そして、心も身体も過度に緊張しています。その結果、過度に自分一人で何とかしようとしています。あなたは、十分頑張っています。一人で頑張りすぎないで。まずは、誰かに自分の恐れを話し、リラックスしましょう。人を信頼することを恐れないで。」
僕は、いつの間にか涙を流していた。