世阿弥に学ぶ人前での話し方
致知と言う雑誌をお借りして読んでいたら
明治大学の学長 土屋恵一郎さんが、「能」を大成した世阿弥について書いていた。
この記事を読んで、私の講演会方法は、断然、シェークスピアなどの劇作家が手がける演劇のパターンではなく、世阿弥が作り上げた「能」のパターンだと感じた。
世阿弥の「能」の構成から学ぶ、講演会の話し方は、以下の3点に集約できる。
1、ストーリーは重要な場面だけをイメージとして伝える
「平家物語」をシェークスピアが演劇にしたら、多分、最初から最後まで物語にして、演劇を組み立てたはずだ。ところが、世阿弥は、物語の重要な場面だけを切り出して、象徴的に語る。行間を読むは聴衆の各々に任せるのだ。
私は、セミナーでも講演会でも、細かな説明はスライドに載せない。自分で描いた絵や、覚えておいてほしい引用図だけをクローズアップしてお見せする。
講演会、セミナーに行って、講師の話を100%覚えている人はいない。話をイメージとして切り取り、脳に記憶するのだ。
つまり、記憶してほしいイメージを詳しく伝える方が、潜在意識に働きかける講演会ができるのだ。
2、聴衆の空気を感じ取って話し方を変える
能の世界では、「時節感当」と言う言葉あるそうだ。世阿弥は、役者が舞台にバッと出て行くタイミングを、「その場の「機」を図って出ろ」と伝えていたそうだ。
序破急と言う物語の構成も、場がすでに盛り上がっていたら、破や急から入っても良いと。
私も、聴衆の理解に合わせて、話し方も、タイミングも変えている。理解のスピードがあまりに異なる人がいる場合には、混乱することもある。しかし、ほとんどの場合、序盤から始まり、メインの話をバッとイメージで伝えて、後半徐々にテンションを上げていく!
3、「却来」の精神
「却来」とはある境地に達した後で、最初の段階に戻る ことだと言う。
老いてから、激しい鬼役をやるそうだ。老いて、自分の体力の限界と向き合いながら、自分のペースで激しい役を演じることで、若い人が鬼役をやるのと全く異なる風格があると言う。
つまり、初心に帰って、かつ今の自分と向き合いながら生きること。
いつでも、医者になった初心と共に、今ある境遇で話せることを精一杯話している。
世阿弥と自分を比較すると言う、大それたことを書いてみた。到底、世阿弥さんには敵わないが、先人に学ぶことは多い。
これからも、「能」のパターンを参考にさせて頂き、楽しい講演会やセミナーを組み立てて行きたい。