もう一つの質問

学生からのもう一つの質問は、こうだ。

「先生は、どこから情報を得てるのですか?」

そう言えば、私の情報源はどこなんだっけ?

少なくとも、現在の医学の教科書からではないことは確かだ。この情報化社会で、自分の診療にとって本当に必要な情報を得るのは難しいことだ。本当はこうだと思っても、逆のこともある。

エビンデンスと言って論文発表されているものでも、製薬会社の意図が大いに関与している場合だってある。

EBMの世界では、Number to treatmentという概念がある。何人の人に投与すると一人効果が現れるか。

向精神薬では、NTTが4−10だという。すなわち、多く見積もって、4人に投与して1人効果があれば良い。少なく見積もると、10人に投与して1人に効果があれば良いとされている。いずれも、プラセボとの比較において、有意差が出た薬である。それらが、まことしやかに、精神科診療の現場で使われる。

それがエビデンスと言えるだろうか?

抗生剤を選ぶ時だってそうだ。多くの場合は、検査で細菌を同定するまで待てないので、ガイドラインに沿って選んでいく。同じ風邪でも、環境によって人が感染する細菌やウイルスは全く異なるにも関わらず、ある一定のガイドラインに沿って選ぶのだ。それこそ、何も見ずに、あてずっぽうで抗生剤を選んでいるようなものだ。外れるのが怖い場合は、ブロードで強力なものを選ぶ。シャープに効くが、腸内環境をズタズタにして偽膜性腸炎を起こしてしまう。

そんな時、バイオレゾナンスは最適だ。今感染している細菌を推定し、それにあった抗生剤の種類も量も推定できる。シャープに効いて、しかも腸内環境に影響がない最低限の量を選ぶことができる。

ガイドラインに沿っていて、結局は当てずっぽうな選択より、共鳴の理論を利用した選択の方がずっと理に適っているだろう。

そうやって、自分の頭で考え、情報を集め、実践し、医学に必要な知恵を身につけてきた。

情報は、あらゆるものから取る。本や雑誌、セミナー情報、学会情報。速読法を使って、幅広く洗いざらいし、その上で、必要そうなものを深掘りする。必要であれば、さらに、原著論文に当たることもあるし、洋書を取り寄せることもある。

皆、情報は、文字情報が主体と考えるひとが多いが、実は最新の情報は、動画や音声の情報だったりする。

だから、興味がある先生の話している講演やセミナーを聞いて、その引用文献に当たることが多い。

知識とは本の中にではなく、人の脳の中にあるとアインシュタインは言った。

何れにしても、これからの医療を担う医学生には、物事の本質を捉える目を養ってほしいと思う。

 

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