この劣等感を克服すれば
「先生、この劣等感さえ克服すれば、私の人生は変わる気がするのです。」
「先生、私のこのトラウマさえ克服できれば、私の人生は変わる気がします。」
そんな、話を診察室で聞くことが多い。
私の答えはこうだ。
「劣等感はなくならないし、トラウマもなくならないです。お釈迦様だって、八百万の神様だって、劣等感も欲望も、悲しみも怒りもあったんです。ガンジーだって、非暴力不服従と訴え続けた背景には、とても悔しい思いがあったはず。そしてそれは、死ぬまであったと思うんです。だから、そんな感情とはうまく付き合っていくことです。」
そう、劣等感も、自責の念も、悲しみも怒りも恐怖も何もなくならない。ただ自分の中にそんなマイナス感情があることを認めてあげること。自分の心の中に汚い根っこの部分があることを受け入れること。
恐れがあると受け入れた時に、人は、成長することができる。そんな汚い部分も含めて人間だと思う。先の古事記の話にも書いたが、八百万の神様だって、あんなに感情の起伏が激しいのだから、私たち人間が感情的であるのが当たり前である。
そう、醜い自分の影の部分を認めよう。そうした時に、初めて人間としての楽しさが出てくるのだ。