講演会を終えて

生きづらさの先に咲く花vol.3を終えた。

今回、実は、直前まで、どこまで話すかを考えていた。

私が捉える、発達障がいの真実の姿と地域全体で取り組むことの意義をお伝えした。お伝えしきれなかった内容を一部お伝えしよう。

1、発達障がいは多因子であること

感染症、救急医療は、病気を単因子と捉えて、感染源としてのウイルスや細菌、事故による骨折に対して、それぞれ対応すれば良い。それによって、日本の乳児死亡率は下がり、現在の長寿社会である日本が実現した。しかし、がんや自己免疫疾患は多因子である。発達障害もそうである。だからこそ、対症療法に限界があるのだ。また、発達障がいに関する遺伝子異常は数千も明らかにされているが、単独で影響する異なるいくつもの遺伝子の異常が影響している多遺伝子異常である。だからこそ、遺伝子異常では説明がつかないこともたくさんある。

2、発達障がいは「シナプス症」である

皮膚など全身の他の細胞は生まれ変わり不要な細胞は死んでいく。いわゆる、新陳代謝だ。しかし、脳細胞というのは、赤ちゃんの時から数は変わらない。ずっと同じ細胞が死ぬまで生き続けるのだ。成長に伴い、神経と神経の繋がり、すなわちシナプスが無数に増えていく。このシナプスの発育の偏りが、発達障害である。だから、多様性があるのだ。シナプス形成不全の場所が異なることにより、症状も異なる。いくつもの多様性が一つの症候群として括られるため、「自閉症スペクトラム症」という言葉が生まれた。そして、シナプス症であるからこそ、シナプスの発育のために、早期療育が大切であり、食事や睡眠などの生活習慣が大切なのだ。

3、発達障がいの原因は先天性要因よりも後天性要因の方が大きいと推定される

1977年に公表された一卵性双生児の研究により92%は遺伝と言われていたこの情報が、一人歩きして、今でも遺伝的要因が大きいと言われているが、それは間違いだったと後の研究で明らかになったのだ。そして、遺伝子は発現するときに、環境要因によって調整されることがわかった。これがエピジェネティクス という考え方である。21世紀に体系化されたエピジェネティクス という考え方により、一気に未知なる環境要因が人間の病気の原因になっていると推定されるようになった。ヒトゲノム計画により、遺伝子情報が明らかになれば、病気の原因のほとんどが解決されると期待されたが、実際にはそうならなかった。遺伝子異常があっても、環境要因によってその発現が抑制されることが分かったからである。このことは、大いに生活習慣や解毒などの治療が意義をもつとも言える。人間はもう「遺伝で体質だから」と言い訳を言えない。一人一人が取り組むべきは、日々の生活習慣であると言える。

4、地域を挙げて支える

発達障がいという傾向を皆で捉えて、そして当事者がそれを自覚し、それを分かってもらう努力をすることは大切である。一方で、やはりそれを皆で支え、地域全体で理解し、グループダイナミクスを働かせる必要があるのだ。今回、500人強の人が集まり、私たちの講演を聞いてくれた。立場の異なる人々が、同じ空間で、同じ概念を共有できた意義は大きい。

地域を挙げて、多様性を認めていく。これは、発達障がいに限らず、私たち一人一人が生きやすい世の中を作っていく一歩である。

私は、医師としてこれからも、生きやすい世の中を作っていくために、地域医療を実践していきたい。

今回、脳神経科学者である黒田洋一郎氏が書かれた「発達障害の原因と発症メカニズム」を参考にさせて頂いた。他にもいくつも参考文献があるが、割愛する。

今回、お話しきれなかった内容は、6月のクリニックセミナーでお話する。乞うご期待!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)