愛こそ全て vol.5

翌日、僕は、母さんの勧めで、近くにできた心療内科を受診した。

さわやかクリニック。何だか、外観がカフェみたいでお洒落。内科もあって、図書館も併設しているようだ。

一通りの話を看護師さんが聞いてくれた後で、診察室に通された。

「こんにちは。」

あ、先生がバランスボールに乗ってる。変わってるな〜。

「こんにちは。」

「初めまして、さわやまと申します。よろしくお願いします。今日はどうされました?」

一通り、職場での出来事を話した。

「それで、一旦、休職する事になったのね?」

「はい。」

「でも、あなたは今すぐ辞めたいと思っている。」

「はい。」

「なぜ?」

「先ほども申し上げた通り、僕には向いていないんです。上司の顔を見ると吐き気がします。もう緊張に耐えられないんです。休んだって何も変わりません。」

「まあ、すぐに辞めるという決断をしないで、休むことができたのは良かったわね。随分、あなたは恵まれているわね。会社によっては、そんなに丁寧な対応してくれないわ。」

「そうなんですか。」

「では、なぜ、会社があなたに休むことを提案したかと言えば、会社のためでも何でもない。あなたの成長のためよ。」

「そうかなあ。」

「ピンチはチャンス。あなたがそうやって、ストレスを感じて病気になっているのは、人生の転機なのよ。あなたが成長するチャンス。自分のできないこと、苦手なこと、マイナス感情に目を背けないで、成長するかどうか。それはあなたにかかっている。」

「そうは言っても、パニックになってしまうんです。会社に行こうとすると吐き気がしてしまう。そして、上司の目を思い出すと恐怖が出て来るんです。そもそも、僕はコミュニケーションが苦手で、怖いんです。何をやっても、どうせダメだから。そもそもスピードに付いて行けない。」

「あなたはよく頑張っている。まずは、自分を認めること。病気の時は、大事な決断を先送りにすることね。ゆっくり休むことがあなたにとって最優先の治療よ。

でも、あなたに一つだけ言っておく。

変わるのはあなた自身であると言うこと。

会社を辞めるのも辞めないのもあなたの自由。ただし、あなた自身の課題を解決しないと、どこの職場に行っても、同じような問題が繰り返し起こるわ。」

「だから、僕は、どうせ、集団生活には向いていないので、一人で仕事をしようと思っています。」

「じゃあ、一人でグラフィックデザイナーで起業したとして、お客さんと話をしないの?」

「それは〜。」

「どこに行っても、コミュニケーションを人と取らないで一人でする仕事なんてないのよ。人間とは人と人との間と書くのよ。人間同士のコミュニケーションの課題を克服しないとね。」

「はい。」

診療を終えた後、僕の心の中にはふつふつと苛立ちのような感情が湧いてきた。

あ〜あ。せっかく、優しい先生に、話を聞いてもらおうと思ったのに、結局、説教だった。何だ、あの上から目線の先生は。心療内科なんて来るんじゃなかった。僕のことなんか、誰も考えてくれない。やっぱり、仕事をやめてやる。