愛こそ全て vol.2

僕は、根岸光一。今年の春、都内のとある自然療法雑貨を扱う会社に就職した。

父親は、群馬の地元では有名な自動車を扱う会社の役員で、週末はいないことが多かった。母親は典型的な専業主婦。兄がいるが、もうすでに5年前に就職して九州にいるので、滅多に会うことはない。

中学は普通に行けたが、高校も休みがちだった。友達はいたが、心から話せる友達ってのはいなかった。

一度、通学途中の電車の中で過呼吸になって、引き返したことがある。それから、精神科に連れて行かれて、薬をもらった。何度か飲んだが、気持ち悪くなって、飲むのをやめた。

勉強も運動も、周囲の友達と同じにできているかどうか心配で仕方がなかった。人並みにできれば良いと両親から言われて育ったが、人並みにさえできないこともある。

どうせ、僕なんて、何をやってもダメだ。

どうせ、僕なんて、誰よりもできない。

そんな自分を抜け出したくて、たまたま出会ったのが、母親が持ってきたフラワーレメディーのチラシあった。

「近所で、教えてくれる人がいるから、行ってみたら?」

そう言われて、自宅サロンでフラワーレメディーを教えてくれる美咲さんという女性に出会った。美咲さんは、バッチのフラワーレメディーを教えてくれて、僕が生きづらいのは、HSPという敏感体質の人間だからだと言ってくれた。

僕が敏感体質?人と違うのかな?

人と違うってことがどうしても嫌だったので、HSPだと言われた時にショックだった。でも、そう言われれば当てはまることがたくさんある。

人混みが苦手

初めての場所が苦手

新しいことに取り組むのが苦手

人に分からないことを聞くのが苦手

そんな自分を克服したくて、地元の大学を卒業後、都内になる自然療法を取り扱う会社に応募し、入職した。

僕の指導担当は、前山悟さんだった。前山さんは、熱血。僕にははっきり言って、ついて行けない。あんなにイケイケどんどん仕事をできる前山さんが羨ましかった。

「この在庫表、昔のを改善してみて。」

「分かりました。」

そう言われて、やろうと思っても、エクセルの使い方すらままならない。

「できた?」

「いえ、今、やっているところです。」

「何か分からないことあれば聞いてね。」

聞くなんて恥ずかしい。こんなこと聞いたら馬鹿だと思われる。そんなのかっこ悪い。なんとか自分で調べて、やってやる。

「なんで、まだできないの?エクセルのこの使い方知ってる?」

「えっと。」

「なんで、知らないのに、教えてもらおうとしないの?」

「えっと。」

思考がフリーズして、気づけば、トイレで過呼吸になっていた。

もう限界かもしれない。もう、明日、北山部長に相談しよう。

僕は、もうこの会社では働くことができないだろうか。スピードに付いていけない。どうせ、僕はできないんだ。一生懸命やっても、無理だ。もうやめて、別の道を探そう。

翌日、北山部長に今までのことを話した。

「いやいや、根岸くん、やめることはないよ。もう少し頑張ってみたら。」

「でも、体調不良でして。」

「じゃあ、少し休んで。心理的に不安定だから、会社の近くに、心療内科があるから、行ってきて。診断書出して。」

「はあ。」