医者としてしか生きていけない

高校生の頃に夢にまで見た医者になった。

その医者を何度かやめようと思ったことがある。
そして、毎日、思う。
医者とは何だろうか。

人の病気の責任を負うことは、本来、どんな医者にもできないのだ。
病気というのは、どんな小さな物でも本人のものである。
だから、医者と言えども、私がどこまで介入して良いのだろうかと
悩む。

治せることなんて、ないのかもしれない。

世の中の医療は、
医者任せで成り立っている。
専門知識を持った医者に任せるしかないと。

その事実を見なかったことにして
お医者さんごっこをいつまでも、続けるわけにはいかない。

だから、私は、講演会やセミナーを続けている。
医療の枠組み自体に対する疑問を、市民に投げかけているのだ。
それは「人間が生きる」ということの根本に関わることなのだ。

そもそも医療の枠組みにイチャモンを付ける医者などと言うのは
自分で自分の首をしめているようなものだ。
「あなたの提供する医療は本当に必要ですか?」
と自分自身に問うているのだ。

それでも、私は、医者を続ける。
医者だから、医療の枠組みについて、話ができるのだ。
医者じゃなかったら、健康について学びの場を提供することなんて
できなかったのだ。

もし、医者じゃなかったら何をしていたかと考えてみた。
私の些細な夢は
山にこもって、絵を描くこと。
そして、自給自足の生活をすること。
そらのほし農園のそらじいみたいな生活が憧れなのだ。

が、多分、私にはできない。
せっかちで、絵を描くことも、農作物の面倒を見ることにすぐに飽きてしまうだろう。

夢にまで見た医者になったのだ。
もうしばらく、医者でいよう。