ピンチはチャンス

私は、勤務医の時に、うつ状態に陥った。
病院に行こうとすると、病院に通勤途中に吐き気を催し
病院にたどり着けなかった。

その時の、上司の先生も、教授も、
私のわがままを許してくれて、仕事を休んだ。
家に帰ると体調は良くなる。
完全にうつだった。
怠け者と言われても、責められても病院に戻ることはできなかった。
だから、最後、病院をやめる時には、
お世話になった先生方、看護師さん達、スタッフの皆さん、患者さんたちに
お礼の言葉さえ、伝えることはできなかった。
今思うと本当に申し訳ないと思う。

休むことは許されないと思って
どんなに激務でも歯を食いしばって働いていたが
あの時、休むことはできたのは
私を支えてくれた先輩の言葉だった。

「あなたに仕事を頼むのは、あなたのためではなくて
病院のためなんですよ。
断っても良いんですよ。」と。

その時、私は涙を流した。
そして、自分は何のために働いて、何のために生きているのか
問うたのだ。
問えば問うほど、もう同じ場所で働くことはできなかった。

最近、うつの患者さんから
「先生は、うつになって、どうやって立ち直ったのですか?」
と聞かれた。
すぐには答えられなかった。

未だ、立ち直ってはいないのかもしれない。
私はいつだって、落ち込みやすいし
いつだって、引きこもりやすい。
それでも、開業して、こんな風に仕事ができるのは
覚悟したから。

どんなことがあって、どんなリスクがあっても
自分がやりたいことをすると覚悟したのだ。

お金のことだけ考えれば
勤務している方がずっと気楽だ。
開業して、借金して、スタッフの生活も支えて
そんなリスクを抱えて、それでもやりたいことがあるからだ。

それは、本当に人が健やかに自分らしく生きることができる
世の中を作ること。
そのためには、自分ができることを
自分の考えるように実践すること。

そう覚悟した時、一歩前に踏み出すことができた。

実際に開業してから、色々あって
これからも色んなことがあると思うが
自分が思う医療を、自分が考える社会活動を
仲間と楽しくやっていきたいと思う。