貧血は万病の元

貧血という病気を知らない人はいないだろう。しかし、本当に知っているだろうか。血液中を巡る赤血球の数が少ないという病気である。貧血といっても、血液中のヘモグロビンが減っている場合から、ヘモグロビンは正常だが、材料となる鉄やビタミンB12,葉酸などが不足している場合まで多岐に渡る。

女性は、小学校高学年から中学生にかけて、朝起きれらない、学校の勉強についていけない、朝礼で立ちくらみするなどの症状が出ることが多い。実は、月経が始まる時期と重なるのだ。これらは全て、月経によって進行した貧血が影響している。

そして、ヘモグロビンが正常値の半分を下回っていても、通常生活を送ることができる女性も少なくない。彼女たちは、徐々に貧血が進んでいるため、貧血に体が慣れており、自分が不健康だという自覚はない。また、貧血が進むと色白になるため、色白なのねと済まされ、あまり気づかれない。

では、彼女たちが、貧血に気づくのはどんな時かといえば、検診を受けた時である。中学生から採血が始まるため、そこで、医療機関受診を勧められる。

厄介なのは、医療不信の女性たちだ。特に自然療法を信仰する女性たちは、医療機関を受診することも、もちろん、検診なども全て拒否することも多い。気づいたら、深刻な貧血に陥っている場合がある。

当院で、パニック発作、立ちくらみ、全身倦怠感、不登校、などの相談では、ほとんどの場合に採血する。結果、多くの場合、潜在性も含めて貧血がある。ところが、貧血をお伝えして、動物性タンパク質を含めて摂るような食事指導、サプリメント、漢方薬内服を勧めるが、治療を中断される女性がいることが分かった。途中で、食事療法も、内服も投げ出してしまう。貧血が重篤にも関わらずだ。

その原因として

1、症状が多岐に渡るため、貧血が原因だと気づかない

頭痛、立ちくらみ、疲れやすい などの症状が貧血に関連している。ところが、症状に慣れすぎているため、貧血が原因だと気づいていない場合が多いのだ。私は、数年前は慢性頭痛に悩まされていたが、重金属の解毒と貧血の改善で随分と改善した。改善して始めて、過去の自分が病的だったと気づいたが、それが当たり前だったので、過去の自分は分からなかった。

2、貧血が徐々に進行しているため、症状に気づかない

貧血が深刻でも、平気でヨガやフラダンス、エアロビなどの運動ができる人も多い。身体は、低酸素に慣れているため、非常に酷使されている状況にも関わらず自覚症状がない人もいるのだ。

3、間違えた健康思想を持っている

鉄というのは、ヘム鉄と非ヘム鉄があり、前者は動物のお肉に含まれ、吸収率が高い。後者は植物に含まれるが吸収率が低いのだ。このため、ベジタリアンの生活を続けていると、ほとんどが、貧血となる。お肉を食べる、食べないは自由であり、どちらでも良いと思う。ただ、重篤な貧血に陥っていた場合には、少しずつ動物性タンパク質を増やしていく工夫をしていく必要がある。ところが、自然療法家の中には、お肉は食べてはいけない、地球に優しい生き方、少食ほど良いとして、自らどんどん低栄養に陥る食事にはまっていく人たちがいる。彼女たちに、いくら説明しても、その場で分かったつもりでも、伝わっていないことが多い。とても頑固なのだ。

4、貧血が身体に及ぼす影響を理解していない

貧血で困っていなければ、治す必要が無いと考える人も多い。貧血は実は、万病の元である。貧血によって、手足の先に赤血球が十分酸素を運ぶことができないので、冷える。体温が下がれば、免疫力が低下するため、風邪を引きやすくなるなど、全ての病気になりやすくなるのだ。さらに、赤血球はタンパク質のため、血中のタンパク質濃度が減ることにより、血漿成分が血管外に漏れ出て、浮腫(むくみ)の原因ともなる。もっとも深刻なのは、卵巣の血流低下である、更年期障害が出やすくなる。さらに脳機能のも影響する。認知症の発症リスクが上がるのだ。もっと深刻なのが、心理状態が不安定になる。貧血による脳機能低下と更年期症状の両者によってうつ状態、パニック状態いずれにも影響する。貧血を馬鹿にしてはいけない。もし、あなたに貧血があるならば、即座に治した方が良い。あなたが想像できなかった健康な世界が待っているのだ。

最後に

ここまで書いて、それでも、貧血を無視し続ける人もいる。病的状態でいることは自由である。貧血を改善するとは、むくみが減って、筋肉量が増えて、顔色がよくなるだろう。ところが、かよわい色白い女性でいたいと言う場合、ちょっと貧血で立ちくらみするくらいでちょうど良いのである。

女性らしいとは何だろうか。そこまで、医者が介入することはできないのだ。