統合医療でEBM構築は可能か

当院では、数社の漢方薬製剤会社から、その種類によって、最も薬効をバイオレゾナンス法で推定して採用している。
薬効と薬価は相関しない。薬価が高いにも関わらず薬効が低いと推定されるものも多い。一方、薬価が低いにも関わらず、他社製剤に比較して圧倒的に薬効が高いと推定されるものも多い。
当院で、数社の漢方製剤を取り入れ始めてから、ある製薬会社のMRさんが来院した。
「先生、最近、我が社の製剤処方が減っているようですが、なぜですか。」
「当院では、種類によって、薬効の高いものを採用しています。患者さんが、同じお金を払うのであれば、効果があるものの方がよいですから。」
「我が社の製剤は、質の高い生薬を栽培し、その薬効には、自信があります。どうして、他社の製剤の薬効が高いと分かるのですか。」
「バイオレゾナンス法で、一人一人に合わせて効果を推定していますので。」
この説明を聞いて、MRさんは納得してくれたかどうかは分からない。

これをEBMで証明しようとするとどうなるか。
薬の治療効果を証明するには、RCTを行うのがスタンダードである。
同じ病気を持った集団に、Aという漢方薬を飲んでもらう。コントロール集団にプラセボを飲んでもらう。その効果を比較する。
漢方薬のRCTが難しい理由がいくつかある。
1、 漢方薬は、別の病気であっても証が同じであれば処方される。ある疾患群の患者を集めても、Aという漢方薬が効果ありの場合とない場合がありうる。
2、 プラセボ薬を作りにくい。向精神薬であれば、同じような錠剤をプラセボとして作れば良いが、漢方薬のプラセボとして粉薬を作ったとしても、すぐにばれてしまうだろう。
3、 製薬会社の財力による。すなわち、大きな会社ほど、臨床研究を大規模で行うことが可能である。いくら薬効が高い薬を製造しても、製薬会社が、大規模臨床研究をするには、ハードルが高いのである。

このようなことを考えると、RCTの結果を待って、患者さんに最も効果のある薬を処方するのは現時点では無理である。
その点、バイオレゾナンス法はすぐれている。その場で、それを推定できるのである。そして、同じ疾患であっても、患者によって、最も効果のある製剤は異なるし、必要量も異なるのだ。
この完全オーダーメイド治療をエビンデンスに落とし込むにはどうしたら良いか。
私は、個人的には症例対象研究が最もとりかかりやすい手法と考える。
リサーチクエッチョンさえ、しっかり作れれば、それにあった手法で研究を考えれば良いのである。
統合医療だから、EBMからほど遠いとは言わせない。
東洋の世界、統合医療の世界にあったエビデンスの出し方があるのだ。
これから、わたしたちは、チーム医療で、エビデンスに即した統合医療を推進していきたい。