空気感

ある方から、「致知」と言う雑誌を頂いた。

最近の政治家は、ポリティカルコレクトネスを大事にするという記事があった。
ポリティカルコレクトネスとは、私の解釈では、「これを言っておけば、国民は納得する。」ということだと思う。
世の中の空気感みたいなものだ。
この記事を読んで、多くの政治家は、人の目を気にして仕事をしているため、
100年先の日本の未来を考えて行動している政治家は少ないだろうと思った。

これを読んで、思い出したことがある。
以前、岩手県の藤沢町民病院の院長の佐藤元美先生の言葉だ。
「選挙の人と免許の人」
佐藤院長は、長年、村の首長と一緒にお仕事されていたので、痛感したのであろう。
政治家は選挙の人。だから、市民の目の色を伺わなくてはならない。
たとえ、正しいことでも市民から反発されてしまったら、辞めざるを得ないので
容易に自己主張できないだろうということだ。
しかし、医師は、免許の人だから、自分の信念に基づいて医療を実践することができる。
それによって、患者 すなわち市民をより良い方向に誘導することができる。

そんな講演を聞いた。(記憶が曖昧で、私の解釈が多分に入っているのをご承知おき頂きたい。)

そう、医師は、専門職で免許の人なので、市民が知らない医学的専門知識を持って
市民の健康を守る義務がある。
そのためには、健康に関する正しい知識の啓蒙を診療や保健活動を通して
市民に伝える必要があるのだ。
その際、気をつけたいのが、患者と医師との間の情報の非対称性だ。
断然、医師の方が知識があるのは当たり前だ。
だから、間違えた方向に医師が情報を誘導すれば、たちまち、国民は不健康になる危険性だってあるわけだ。
だから、私たち医療者の責務は大きい。

と私は考えていたが、最近の医療者は必ずしも免許の人だけとは限らない。
人気投票と同じで、患者さんがいなければ、経営が成り立たないため
患者さんが喜ぶことならなんでもするというスタンスの医師もいるようだ。
患者さんが薬が欲しいと言えば、処方する
患者さんが検査をして欲しいと言えば、検査をする
過剰な処方、過剰な検査は、すべきでないし、その理由を説明して
お互い議論をする必要がある。
それが、自立した健康づくりだと思う。

そのためにも、医師は誇りを持って、「免許の人」として仕事をすべきだし
決して、医療的誠実さよりも空気感を優先させてはいけないと思う。

開業して、何人かの医師に聞かれたことがある。

「先生、自由診療をして、患者さん来ますか?」
「どうやって、セミナーの集客しているのですか?」

自由診療があなたの体にとって必要だということを医学的に説明し
患者さんと議論を尽くし、納得してもらって、受けてもらう。
それを繰り返していっただけだ。
その議論の場が診察室であり、我らぐんまHHCのセミナーなのだ。

特段、過剰な広告した訳でもない。
本当に価値のある医療は、決して、他と同じではないかもしれない。
常識とはかけはなれていることもある。
でも、きちんと伝えていけば、伝わる。
その繰り返しである。
患者さんが求めることだけを提供していたら
日本の医療は終わってしまうと思う。
そうならないように、日本の医療体制を守っていくためにも
私たち医療者は、正しい知識を啓蒙しより良い医療を提供していく責務があるのだ。

医師は決して、人気投票とりに走ってはいけないと思う。