私が発達障がいに取り組む理由

先日、某新聞記者のインタビューを受けていて、気づいたことがある。
私が、総合医でありながら、発達障がいに取り組む理由。

1、総合診療のモットーは、何でも診る。
発達障がいについて学んでいくと、従来の精神医学の枠組みでは捉えきれない疾患概念であることが分かる。
感覚過敏があり、こだわりが強く,コミュニケーション障がいがある
などなどの症状があるが、いわゆるチェックシート方式では、評価することができない。
このため、精神科医も小児科医も頭を悩ませ、潜在的患者数は多いが見逃されているケースが多いそうだ。
ある特定の小児精神を専門とする医師が専門外来と称して、対応しているが、供給が需要に追いついていない状況だ。
発達障がいのように、医療では心と身体の両面から対応が必要で
その上、教育的社会的面からも支援が欠かせない。
このような、複合した支援が必要な場合、実は、何でも診る総合医が
力を発揮しやすい。
なぜなら、我々総合医は、医療、行政と協働で取り組む地域医療を学んでいるのだ。
また、遭遇したことのない疾患概念に対して
どん欲に学び、自分ができる限り対応しようとする姿勢を学んでいる。これを、先輩方は「総合医マインドの醸成」と呼んでいた。このため、未知の病気に出会った時に、拒否反応が少ない。
これは、専門医にはない総合医の強みであり
強みを活かして発達障がいに取り組む意義は大きいと思う。
いずれにしても、専門医の先生方と協力して取り組む必要があることは言うまでもないだろう。

2、心療内科とは、心(精神科)と身体(内科)の両方を取り組む科である。
本来の心療内科の定義は、心と身体の両方を診るという意味だそうだ。いつの間にか、精神科とほぼ同義で、うつが心の風邪キャンペーンに乗じて、気軽に受診できるようにするための標榜科になってしまった。
私が身体を主に診る内科医の立場で、心のケアに取り組むのは、本来の心療内科の定義に忠実であるということだ。

3、気づいたら、私の周りはグレーゾーン(パステルゾーン)だらけだった。
学んで気づいたが、自分を含めて、感覚過敏や自閉傾向、多動傾向の人が周囲に多いということだ。
彼ら彼女らはHSPと呼ばれ、感受性が豊かであるために、生きづらさを抱えて、自然療法などを自分で学び克服している。このため、自ら苦しさを乗り越えているので、思いやりの心が人一倍強いのだ。
そんな彼女らに助けられて今の私がある。そんな彼女らが、表に出て、最大限能力を発揮できる社会作りをしていきたい。これが、私が発達障がいに取り組む最大の理由である。