根拠のない自信が大切

人生でもっとも嬉しかったことの一つが大学受験の合格だった。

高校三年生の時に、大学受験に失敗した私は、当時の同級生と一緒に、ある予備校で、一年間浪人生活を送った。
浪人生の頃、私たちの口癖は

「根拠のない自信が大切なんだ。」

と全く根拠はなかったが、絶対に大学受験は合格すると信じていた。ここで根拠を求めてしまうと途端に自信がなくなってしまう。だから、根拠は要らなかった。

そして、その年、なんと、その予備校の史上最高の快挙を遂げた。当時のクラスの10名近くが全て志望校の国立医学部に合格したのだ。

よく、「浪人生活は、大変だったでしょ?」と聞かれることがあったが、勉強していた当時、私たちには、全く悲壮感がなかった。私たちは楽しく勉強していた。高校時代は女子校だったので、むしろ、初めての共学生活にちょっとドキドキしながら、しかし恋愛とは程遠い、同志のような仲間で一年を楽しく過ごした。そして、講師の先生方は、とても個性豊かで人間性はともかくとしても、教え方がとても上手だった。高校教師にはない面白さが私たちを惹きつけた。

それでも、夏休みに、図書館で勉強していると、すでに医学部に合格している同級生たちとすれ違うことがあった。楽しそうな大学生活を謳歌している彼ら彼女らに会うと羨ましいという気持ちもあった。私もあんな風になれるのだろうかという不安もあった。

高校生活でもない大学生活でもない、あの不思議な一年間は、すっぽりと時間感覚が抜けている。夢だったのかもしれない。

最近、通院している若者たちから、受験合格の知らせを受けると、とても嬉しい。そして、今まさに受験勉強している子供達にはエールを送る。

「根拠のない自信が大切なんだ。」

そんなことを言う大人はいないかもしれない。でも、本当のことだ。

受験シーズンだから、ちょっと昔の自分を思い出した。