先生、薬を飲むのをやめても良いでしょうか。

毎日、診察室で、いろんな質問を受ける。

「先生、この薬、飲み続けても良いでしょうか。」
「先生、この薬、飲むのをやめても良いでしょうか。」
「先生、サプリメントは、いつ何錠ずつ飲めば良いのでしょうか。」

「どうぞ、お好きに。」

などと、答えようものなら、患者さんはますます悩んでしまう。

「〇〇が治っているならば、やめても良いでしょう。ただし、不安があれば、飲み続けても良いですよ。」

それでも不安そうな顔をする。

「では、やめましょうか。」

こんなやり取りを聞いていた看護師さんから、こんなアドバイスを受けた。

「先生、世の中、一般常識では、薬は、先生の言う通りに飲まなければならないと教わります。勝手に調整してはいけないと病院で言われるんです!」

「そうなの?」

ああ、そうだったのか。
漢方薬や睡眠薬、抗不安薬などの場合、当院では、体調に合わせて、薬の調整を患者さんに任せることも多い。
それは、どうやら、一般常識的には、非常識なことらしい。

やっと気づいた。
診察室での押し問答を聞いていた看護師さんはヒヤヒヤしながら、
私と患者さんの噛み合わない話を聞いていたのかもしれない。

それを知ってから、
私は、なるべく、単純明快な指示を出すことにした。
人は、選択肢が多いと迷うのだ。

しかしながら、私は医師として、いつも迷う。
薬の情報を伝える義務は私にある。
しかし、その情報を得た上で、薬を飲むのは、やっぱり自己責任だと思うのだ。
飲むのも、飲まないのも、自由。
日々、そんなゆらぎのある診療を提供している。