人工知能は人を幸せにするのか?

学会報告シリーズの最後である。

「人工知能は人を幸せにするか」という題で話されたのは、HITACHIのエンジニア、矢野和男先生のお話だった。

さて、皆さんは、人工知能と聞いて、何をイメージするだろうか?

ちなみに、私の夫は

「人工知能が活躍する時代になったら、俺は生きていけなくなる。」という不安を抱いたそうだ。

では、本当にそうだろうか?

孔子の言葉にある

「学びて時に之を習ふ。亦説(よろこ)ばしからずや」

人は、実験と学習を繰り返して、知識を自分のものにしていく。トライアンドエラー。エラーがあって初めて、学ぶことができるのだ。

太田でマンゴーを無農薬で栽培している柳田さんは、自らが農薬による健康被害を受けて、漢方を使った土壌開発をし、今に至ったそうだ。

もし、実験する勇気がなかったら、今の彼はなかっただろう。

私は、勤務医を続ける中で、限界を感じ体調を崩した。そして、バイオレゾナンスを核とした統合医療に出会い、自分なりに精査し、今に至った。

もし、他の概念の医療も試してみようという勇気がなかったら、今の私はない。

実験をやめたら人類の進歩は止まってしまう。

この実験と学習をやめてしまうハードルは二つある。

1、人の思い込み

思い込みとは何か。人が決めたものである。医療であれば、ガイドライン、常識だ。野菜をガイドライン通り作っていたら、農作物は農薬まみれになる。ガイドライン通り医療を実践していたら、人は薬まみれになる。

2、失敗への恐怖

人と違うことをして批難されたらどうしよう。もしこの実験が失敗して、周囲に迷惑をかけたらどうしよう。それゆえ、人はホメオスタシスを好む。前と同じでよい。常識に従い、ガイドラインに従うのだ。

一方で、今までの時代は、皆がガイドラインに従うことで、良いこともあった。標準化農業は、農作物の大量生産が可能となり、飢えで死ぬひとはいなくなった。標準化医療は多くの人を救うことが可能となり、私たちの平均寿命は伸びている。

しかし、私たちは平均寿命を追求することを終え、幸福寿命を追求する時代に入ったのだ。今までの概念を否定するつもりはない。ただ、概念は変わっていくのだ。時代に合わせて変化させていくべきである。そのためには、我々は、実験と学習をやめない。

実験と学習をやめてしまったサービス労働者たちは、AIに仕事を取って代わられる可能性が高い。一方で、実験と学習をやめない知識労働者たちは、自らの付加価値を高めていくことができる。農家も医療者も、全ての人たちが真に学ぶことで尊い存在になれる。

そして、人間の実験と学習をサポートするのがAIである。実験がより精密に高度にできるようになるのだ。私たちは、AIとともに進化していくことができる。

私たちは、AIの力を借りながら、次世代の健康を守っていく。そんな「学びながら健康になるまちづくり」を本気で続けていきたい。