ドクターは、薬の副作用を知っていて、患者に勧めるのですか?

当院看護師Wさんと話していて考えさせられることがあった。

「ドクターは、薬の副作用を知っていて、患者に勧めるのですか?」

この答えをしばし考えた。
ドクターと言えど、人間であり、千差万別だ。
特に、私は、ドクター代表とはほど遠い存在であろう。
でも、医師として考える。

もちろん、医師として、副作用の頻度を把握する。その上で、
副作用を上回る利点があると思うから、患者に勧めるのである。
ではどれくらい効果があると考えているだろうか。

医療の世界では、NNTが10以下であれば、薬はおよそ効果があると考える。
NNTとは、1人の患者に効果を及ぼすのに、何人の患者に治療を必要とするか である。
つまり、NNT10とは、1人に効果を出すためには、10人の治療が必要であるということ。
これは、薬によって異なる。

別の統計によれば、医師は、患者に投与した薬が
20-30%程度効果があれば良いと考えている。
一方、患者はどうだろうか。
100%自分に効く薬でないと処方して欲しくないと思うのが心情ではないだろうか。

ここに、医師患者コミュニケーションの不足がある。
患者は、医師に自分の病気は何でも分かり、医師が出してくれた薬さえ飲めば
治ると思っている。逆に、医師にかからなければ病気は治らないと考えている。
一方で、医師は、自分の提供する医療の限界は十分承知している。
しかし、自分が提供している薬がどれくらい効くのか
そして、この医療に終わり、すなわち卒業があるのかは説明しない。

実は、患者は、完璧な医療を求めすぎているし
医師は、医療は、完璧ではないし、不確実性を常に兼ね備えていることの
説明を怠っている。

私たちは、もっと、医療のその不確実性について議論すべきであるし
その上で、医療とうまく付き合う方法と考えるべきである。
そして、健康は、医療だけで何とかなる問題ではない。
あなた自身の問題であるから、大きな視野で捉える必要がある。

だから、学びながら健康になる必要があるのだ。