ニーズがあるのか?

大学で初期臨床研修を修了して、総合診療科を専攻した時に、同級生から「総合診療って、ニーズがあるの?世の中に知られているのか?」と聞かれたことがある。

先日も、とある勉強会に行ったら「(統合医療・代替医療)そのような医療ってニーズがありますか?そもそも患者さんが知っているのですか?」という質問を受けた。

最初、なぜ、そのような質問を受けたのか分からなかった。

だんだん、謎が解けて来た。

世の中の大多数の人というのは、皆が知っている、皆が認めていることをサービスとして提供することが職業だと思っている。そもそも(士業と言われる職業は一緒かもしれないが)医学教育が、職業専門学校みたいなものだから、一定の基準を満たす為に、みな、同じ事を訓練する。医師国家資格に合格し、その後、学会の認定資格を取って行く。資格を取って、ある一定の人たちが認めた基準を満たしていることをアピールする。

医療におけるガイドラインもそうで、日本中どこでも一定の医療ができるようになっている。例えば、ひどい胃腸炎になって、どこの医療機関にかかっても、ある一定の医療(内服・点滴)が受けられる。インフルエンザワクチン接種もそうである。

皆が知っている医療ではないと、患者さんが受けたがらないだろうという理論である。皆が知っていれば、安心して受けるという考えだ。

つまり、相手が求めていて、自分がそれを提供できて、さらに、他の人もできることを提供することになる。結果的に、患者さんの奪い合いになる。

 

しかし、働いてみて分かったことは、私の元に通院して来てくれる患者さんは、隣のK先生ではなく、私を選択してくれた。それは、他では得られないことを得られるからである。逆もあったろう、私の元ではなく、隣のK先生を好んで通院している患者さんは、K先生だから通院していたのだ。

私の場合は、言いにくいことを何でも話せるということを患者さんが求めて来てくれた。心療内科でなく内科医として働いていたが、血圧や糖尿病など生活習慣病で通院されている方が、話せるのがうれしいと言って来てくれた。

開業して分かったことは、誰にでもできる医療は、他の医療機関にお願いすれば良いということだ。

私が目指すのは、私ができて、他の人にはできない医療を、求めている人に説明しながら提供することである。それを総合診療×統合医療×心のケアで実践していきたいと考えている。ニーズというのは、本来、隠れている。ウォンツは明るみに出ているが、ニーズは、隠れている。それは、お客さん本人さえ自覚していないのだ。サービスが提供されて初めて、くすぶっていたニーズが顕在化する。そのニーズを掘り起こす作業がセミナーであり、講演会なのだ。

だから、「ニーズはあるのですか?」という質問に次のように答えよう。「私には、ニーズが見えます。他の人には見えないニーズが見えたときが、ビジネスチャンスです。新しい価値観を提供して世の中を変えて行くチャンスです。」